挑戦のきっかけとなったもの
あの頃のわたしは、ひどい閉塞感の中で毎日を過ごしていました。地方都市で夫が務めている勤務先の社宅に住み、子供たちはまだ幼く、家事と育児の繰り返しの中で一体自分が、どこに向かって歩いているのかわからない状態。
時代はまだ辛うじてバブルの末期で「24時間働けますか」というキャッチコピーがまかり通っている頃でした。
夫は帰宅が午前様になることもしょっちゅうで、子供たちの世話を夫婦でシェアするなど、事実上無理。
日常の中で2歳と3歳の子供たち以外に、わたしが言葉を交わす相手といえば、数人のママ友のみ。そのときの話題といっても子供のことか、テレビドラマやご近所の噂話くらい。
ほんとうに狭い狭い世界に暮らしていました。そしてそんな生活の中で、言い知れない焦りのようなものを感じ始めていました。ルーティンの中で、あるいは家庭という安全地帯の中で、何一つ自分で考えなくても日々が過ぎていく。何かを決めなくてはならないときは、夫に聞けばいい。
え??わたしって そんな人間だったっけ?
なにひとつ自分で考えず、なにひとつ自分で決めない。
この生活を続けていれば、あっという間にわたしの人生って終わる気がする。何も学ばず。成長もせず。
いやだ。いやだ。いやだ。
夜、子供たちを寝かしつけた後、連日激務の夫が深夜に帰宅するまでの間、考え続けました。
何かに挑戦したい。自分の頭で考えて行動したい。
そうだ、どこか言葉の通じない外国に行ってみよう。子供たちを連れて。わたし一人で。そうすれば、自分で決めて 行動するしかない。夫には頼れないし、逆に子供たちはわたしに頼るしかない。このぬるい生活に慣れきった今のわたしが、どれだけ対応できるのか、試したい気持ちもありました。
心が決まったら、あとは行動あるのみ。すぐに夫に計画を打ち明けました。
「ねえ、子供たちを連れて、どこか外国へ行こうと思うの。一か月くらい、治安が良くて、物価がそんなに高くなくて、できれば英語圏の・・ニュージーランドあたりがいいかなと思うんだけど」
意外なことに夫はあっさりOKをだしてくれました。私の焦りや葛藤をよく理解してくれていたのでしょう。ただしそこには、一つの条件がありました。
まずは最低限の英語力、身につけてからの話だよ と。
「だって、あんたって、英語未経験じゃない?大事な子供たちを連れて見知らぬ国に一か月も行くんだから、それくらい当然でしょ?とりあえずせめて英検2級合格したら、行っていいよ」
こうして 英語未経験主婦の挑戦は始まりました。わたしは今でも夫に感謝しています。頭ごなしに反対せず、わたしの気持ちを尊重してくれた事。とりあえず英検2級合格を条件として提示してくれた事。
そればかりか、一か月間の渡航の費用も出してあげようとまで言ってくれたのですが、これは私が断りました。一か月分の旅費をパートに出て稼ぐことも含めて、わたしの挑戦は始まっていると 思ったからです。
でもその前に、とりあえず英検2級。
英検2級に合格できたら、その次はパート探しだ・・・この順番は決して譲れませんでした。だってどれだけ勉強すれば英検2級に合格できるのか、自分で見当もつかなかったから。英語なんて全然、好きでも得意でもなかった私です。大学時代も当然英文科ではなく、英語に関しては単位をとるために、友達のノートをコピーさせてもらっていた記憶しかありません。今思えば、バブル真っ盛りのダメダメ女子大生でした。しかも大学を卒業してから、はや7年。高校卒業程度と言われる英検2級ですが、その頃のわたしは中学英語すら怪しい状態でした。なのでまず、いくら時間がかかるかわからない、英検2級を取るところからスタート。
独学を始めるために、教本を求めて わたしは本屋へと向かいました。

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